共働きで忙しいけれど、中学受験を視野に入れている……。
そんな家庭にとって、放課後をどう過ごすかは大きな課題です。

かつて学童保育所は、子どもが安全に放課後を過ごせる場を提供することが主な役割でした。しかし近年は家庭の教育熱の高まりを受け、単なる預かりにとどまらず、習い事併設型や中学受験特化型など、多彩なサービスが提供されています。

この記事では、中学受験対応の学童を選ぶポイントと、おすすめの民間学童サービスを紹介します。

学童サービスの種類と特徴

一言で学童といっても、その種類はさまざまです。
まずは公立学童と民間学童の違いをはじめ、民間学童の中でもどのような種類があるのかを確認しましょう。

具体的には、次のように運営主体や費用の相場、過ごし方が異なります。

	公立学童	民間学童
		中受特化型	受験サポート＋習い事型	習い事重視型
運営主体	地方自治体	民間事業者	民間事業者	民間事業者
費用の目安	2,000〜10,000円ほど	20,000〜80,000円ほど	20,000〜80,000円ほど	20,000〜50,000円ほど
預かり時間の目安	18時まで ※学童による	22時まで ※学童による	22時まで ※学童による	22時まで ※学童による
過ごし方	遊びが中心	中学受験に向けての学習が中心	中学受験対策に加え、習い事も充実	習い事や体験型プログラムが豊富

公立学童：基本的な預かり機能が中心

公立学童とは、地方自治体が運営する「放課後児童クラブ」「放課後キッズクラブ」と呼ばれる預かりサービスです。

その多くは学校の敷地内や児童館内に設置されており、月額1万円以内で利用できるケースが一般的です。

利用にあたっては、保護者の就労証明書などの提出が求められる場合もあります。

預かりの最中は、基本的に友達との遊びが中心です。指導員による宿題サポートなどはあるものの、「必ず宿題を終わらせて帰るとは限らない」「宿題以外の積極的な学習サポートは行われない」という場合も多くあります。

民間学童：学習サポートや習い事など多様なサービスを提供

民間学童は、民間企業が運営する放課後の預かりサービスです。

公費によって運営される公立学童と違い、利用者からの月額利用料等で成り立っています。そのため、利用時間や日数によっては、月額10万円近くかかる場合もあります。

一方で、民間学童はスクールごとに明確な教育方針や特色があるため、放課後の時間を「教育の場」として有効に使えるのが大きなメリットです。

今回は、民間学童を次の3つのタイプに分けて紹介します。

中学受験特化型の学童

中学受験特化型の民間学童とは、放課後の預かりと中学受験対策を一本化した学童保育です。
中学受験に特化したカリキュラムを用意しており、塾を併設しているケースもあります。

忙しい共働き家庭では、中学受験の伴走に不安を感じることも多いもの。放課後の預かりと受験対策を同時にサポートしてもらえる場所があれば、中学受験に対する心理的なハードルもぐっと下がるでしょう。

また、大手中学受験塾の母体が運営する、低学年対象の学童もあります。高学年以降にすんなりと受験学習に移行できるよう、基礎学力や思考力を段階的に高めてくれます。

中学受験の学習サポート＋習い事型の学童

大手中学受験塾のカリキュラムやメソッドを使用しているわけではないものの、中学受験をサポートするコースを設けている民間学童もあります。

これらの民間学童は、他塾の補習や宿題もサポートしてくれるなど、個別で柔軟に対応してくれるケースが多いのが特徴です。

また、近年実施校が多い「英語選択入試」に対応した学童もあります。

習い事重視型の学童

宿題サポートはあるものの、中学受験に関する直接的なサポートは明言していない民間学童もあります。

これらの学童は、習い事や体験型アクティビティに重点を置いているのが特徴です。

思考力や探究心、非認知能力などを伸ばすカリキュラムやプログラムが多数用意されており、子どもたちは楽しみながらさまざまな経験を積むことができます。

低学年のうちはのびのびと多様な経験を重ね、中学受験に必要な知的好奇心や思考力など、学びの土台をつくりたいという家庭にもおすすめです。

中学受験対応の学童の選び方

中学受験を見据えて民間学童を利用する場合、どのようなポイントに気をつけて選べばよいのでしょうか。

ここからは、中学受験対応の学童の選び方についてお伝えします。

我が子・家庭に合う教育コンセプトか

学童を選ぶ際は、まず家庭の方針や希望を明確にすることが大切です。その上で、家庭の方針に合った学童を選びましょう。

「中学受験対応」と掲げる学童でも、その特徴はさまざまです。大手中学受験塾系列やメソッドを活用する民間学童の場合、預かり時間のほとんどを学習に費やすケースもあります。一方で、学習以外の習い事やイベントの時間を設けている学童も少なくありません。

子どもの性格や家庭の方針と合わない学童に選ぶと、親にも子どもにも無理が生じてしまいます。

​学習時間や自習環境の質はどうか

学童を選ぶときは、集中して学習できる環境があるかを確認しましょう。

中学受験を見据えて学童を利用する場合、預かり時間の中で集中して学習に取り組めるかどうかが重要なポイントです。

学童にはさまざまな年齢の子どもが集まるため、静かで集中できる環境かも確認しましょう。

また、指導員がどこまで学習に関与するのか？という点もチェックが必要です。「学習を促すが、他塾の宿題には答えない」というケースもあるため、事前に確認しておくと安心です。

自宅からの距離や時間的に通いやすいか

学童への通いやすさも要チェックポイントです。

中学受験は毎日が時間との勝負です。学童と自宅の距離、送迎サービスの有無、預かり時間などを考慮して、通いやすい環境か確認しましょう。

どんなにカリキュラムが魅力的でも、移動時間が長いと子どもへの負担も大きく、家庭学習にも支障が出てしまいます。

中学受験対応学童も！民間学童サービス10選

ここからは中学受験対策におすすめの民間学童を紹介します。

3つのタイプに分けて紹介しているので、ご家庭の方針と照らし合わせながら参考にしてください。

【小1～3向け】ピグマキッズ

ピグマキッズの特徴

ピグマキッズは、放課後の預かりと中学受験に向けた思考力や記述力の土台づくりを両立できる学童です。

中学受験塾SAPIXが長年のノウハウをもとにつくりあげた通信教材『ピグマ』を使用し、シーダーと呼ばれる指導員がサピックスメソッドに基づいて質の高い学習をサポートしてくれます。

通常の学習内容は算数と国語が中心ですが、夏休み期間中の特別プログラムやオンライン英語なども充実しています。

また、子どもの自主性を尊重しながら、学童内での生活ルールをしっかりと身につけさせてくれるのも安心できるポイント。

お迎え時の精算で、通常時の夕食や長期休暇中の昼食にも対応してくれるなど、働く保護者にもうれしいサービスも充実しています。

【小1～3向け】伸芽'Sクラブ学童

伸芽’Sクラブ学童の特徴

伸芽’Sクラブ学童は、伸芽会やTOMASを擁するリソー教育グループが運営する学童です。

忙しい家庭に代わって、学習の習慣づけを含めた放課後の時間を丸ごとサポートしてくれます。お迎えが遅くなる場合には、栄養バランスを意識した夕食の提供も可能です。

学校の宿題だけでなく、基礎学力の養成を毎日のプログラムに組み込んでいるのも特徴のひとつ。中学受験や内部進学に対応した塾を併設しているため、学力向上を目指す家庭にぴったりです。

さらに大きな魅力は、ピアノやバイオリン、囲碁など、放課後に本格的な習い事ができる「プラスワン教育」です。指導にあたるのは一流の講師陣ばかりです。

また、季節ごとに日帰りツアーや宿泊合宿などのイベントも開催。ただ学習のサポートをするだけでなく、情操教育も重視しながら子どもの成長を多方面から支えてくれる学童です。

キミライト

キミライトの特徴

キミライトは、四谷大塚の『予習シリーズ』（低学年は『ジュニア予習シリーズ』）や学習メソッドを活用した『四谷大塚ネット』をもとに学べる学童です。

予習→授業→テストを1週間で行う学習サイクルを採用しており、しっかりと学習内容を定着させることができます。

低学年コースの月例テストはオプションですが、高学年になると、中学受験塾と同じように組み分けテストを実施し、学力に応じた指導を受けられます。少人数制クラスで一人ひとりをしっかり見てもらえるのも大きな特徴です。

自習室も完備しており、他塾の宿題なども見てくれるのもうれしいポイントです。

えすこーと

えすこーとの特徴

えすこーとは、3〜12歳と幅広い年齢を対象に、最長21時まで預かり可能な学童です。

特徴はなんといっても、英語・そろばん・ピアノ・ロボットプログラミングなどの習い事が充実していること。

校舎によっては、英検取得を目指すLepton英語教室や、中学受験の土台をつくる四谷大塚リトルスクールなどもえすこーと内で学べます。

さらに、中学受験を検討する家庭にとってうれしいのは、中学受験塾サポートコース。

他塾の宿題にも対応し、1グループ5人以下のチューター制で、学習をサポートしてくれます。

季節ごとのイベントや、夏休みの日帰りキャンプ・合宿など、子どもの興味関心を刺激する催しも多く開催されています。

MOCOPLA

MOCOPLAの特徴

MOCOPLAは、放課後の預かりを中心に、豊富な習い事や学習コースで多様な過ごし方を提案してくれる学童です。

中学受験クラスは、両親の仕事が忙しく中学受験の伴走が難しい家庭におすすめ。補習や宿題のサポートはもちろん、夕食の準備なども対応してくれます。なお、中学受験クラスをはじめとするスタディのコースは、学童を利用していない子も通うことができます。

また、2ヶ月に1回の子どもとの面談や定期的な保護者面談で、志望校合格に向けた家庭との連携も意識されています。

低学年のうちから中学受験を見据えた学習をしたい家庭には、学習意欲の向上や思考力の育成を目的とした「アドバンスクラス」も用意されています。

J PREP A+

J PREP A+の特徴

J PREP A+は、放課後をオールイングリッシュで過ごせる学童で、徹底的に英語学習ができます。

20時までの学童としての利用はもちろん、放課後の時間で確実に英語を習得したい小学生を対象に、最適な学習環境を提供しています。

全員が受講するコア・カリキュラムに加え、年齢やレベルに応じてさまざまな学問分野を英語で学べるCLILカリキュラムというアドバンストな英語学習も用意されています。

その他、小学校1年生からスタートし、小学校4〜5年生には英検準2級レベルの実力を目指せるカリキュラムも。コースは学年別ではなく、入会時のレベル認定テストの結果に応じて最適なコースに振り分けられます。レベルによっては、定員に空きがない場合もあるため、注意が必要です。

また、中学受験に対応したカリキュラムも充実しています。教材には中学受験対応の進学塾でも使用されているものを採用。テキストで問題を解くだけでなく、ディスカッションなども取り入れています。通常の中学受験対策とともに、英語選択入試や英語特化型試験を検討している家庭にもおすすめです。

FlyNexia

FlyNexiaの特徴

FlyNexiaは、英語とSTEAM教育を組み合わせ、英語を使用しながらプログラミングやアートなどを学べる学童です。講師はアメリカ出身のネイティブが中心で、Minecraftを活用したプログラムなど、子どもが夢中になるカリキュラムが多数提供されています。

小学4年生からは中学受験対応の「Smart JUKU」というカリキュラムも提供。英語選択入試対策を中心とした塾ですが、国語や算数の授業も組み込まれているため、志望校の幅を広げる学習が可能です。もちろん、英語作文やプレゼンテーションの対策授業もあります。

また、AIを活用した学習サポートも特徴です。個々のつまづきポイントや原因を特定した上で学習計画を設定してくれるので、無駄のない、効率的な学習が可能です。

さらに親子へのコーチングプログラムや、モチベーション向上を促すコミュニケーションを大事にしてくれるのも、中学受験期の家族にはうれしいポイントです。

明光キッズ

明光キッズの特徴

明光キッズは、習い事や体験型アクティビティが充実した学童です。サッカーやそろばん、英会話など、小学生の定番の習い事が学童保育の中で完結します。

明光キッズの一番の特徴は、年齢に合わせた体験型アクティビティです。実験教室やクッキングなど、毎日違ったアクティビティが用意されており、明光キッズならではの体験ができます。

さらに、個別指導の明光義塾による独自カリキュラムを活用した学習教室「まなび」では、基礎知識や思考力、学習習慣を身につけることができます。レギュラー会員であれば、オプションの料金なしで受講できます。

預かり中の途中退出・再入室も可能で、習い事や学習塾への個別送迎にも対応。子どもの放課後の過ごし方の幅が広がる学童です。

アフタースクールワイズ

アフタースクールワイズの特徴

アフタースクールワイズはZ会グループが運営する学童で、子どもの探究心をくすぐるプログラムやスクール外のアクティビティが豊富です。

親元を離れてスクールの友達と一緒に宿泊体験をする「探求キャンプ」や、キッザニアなどに出かけて普段できない体験をする「探求トリップ」など、子どもが喜ぶイベントが多数用意されています。長期休みなどに子どもだけで体験学習をさせたい家庭には、ぴったりの学童です。

また、普段の学童内では習い事として「探求クラス」があります。国語トレーニングや英語、サイエンスなど、学習基礎能力や思考力を伸ばすプログラムが多いのが特徴です。

宿題を終わらせてくれるサポートに加えて、学習系の習い事が豊富なのも嬉しいポイントです。

ウィズダムアカデミー

ウィズダムアカデミーの特徴

ウィズダムアカデミーの特徴は、なんといっても30種類以上の習い事と毎日開催されるアクティビティです。

共働き家庭では、習い事をさせるにもさまざまな調整が必要ですが、ウィズダムアカデミーであれば習い事が学童内で完結するため、子どもの「やりたい」を叶えてあげられるのがうれしいところ。ほかの学童ではなかなか見かけない、バレエや空手など、体を動かす習い事もあります。

また、毎日2種開催されるアクティビティは、SEL（感情の理解など人間関係の力を育て、よりよく学び・生きる力）、STEAM（科学・技術・工学・芸術・数学を横断的に学び、課題を解決する力）、LANGUAGE、ICTなど、今後の教育の要素として欠かせない分野をテーマに行われています。

英語のほか、私立・国立小学校受験指導やピグマキッズなど、中学受験に役立つ習い事も提供されています。中学受験に必要な思考力や基礎学力を高めつつ、さまざまな習い事を体験させたい家庭におすすめです。

中学受験対応の学童を利用した家庭の1日のスケジュール例

中学受験対応の学童に通った場合、放課後はどのように過ごすことになるのでしょうか。

ここでは、共働き家庭を想定した1日の流れを、通塾日と通塾しない日の2パターンで紹介します。

家庭でのサポートをイメージする際の参考にしてみてください。

通塾日の例

【通塾日のスケジュール例】

～15:00	下校・学童へ入室
15:00～17:30	宿題・学習(途中でおやつ)
17:30	塾へ移動
18:00〜20:00	塾で授業
20:30	帰宅・夕飯

学童入室後はおやつの時間を挟みながら、学習時間をしっかり確保できます。

また、小学校や習い事、学習塾、自宅への個別送迎が可能な学童であれば、共働きのご家庭でも安心です。

通塾しない日の例

【通塾しない日のスケジュール例】
　学習＋習い事併用スタイル

～15:00	下校・学童へ入室
15:00～16:00	宿題・学習(途中でおやつ)
16:00～18:00	学童の習い事 アクティビティ
18:00	夕食
19:00〜19:30	お迎え・帰宅

塾がない日も、学童に行けば学習リズムを保つことができます。

上記でご紹介したのは学習と習い事・アクティビティを織り交ぜた過ごし方ですが、学童で過ごす時間のほとんどを学習にあてるスタイルも可能です。

執筆：草井理菜