中学受験ノウハウ

【中学受験】集団塾と個別指導塾の掛け持ち・併用はタブー? メリット・デメリットを解説

2025.07.14

塾の掛け持ち(併用)について

中学受験を目指して実際に塾に通い始めてから、さまざまな理由で塾の掛け持ちを考える保護者の方も多いのではないでしょうか。

「子どもはがんばって通っているけれど成績が伸びない」
「過去問対策が担当の先生一人では対応しきれず不十分に感じる」
「通っている塾では自習室が使えない」
など、現在の塾に不足する点を補うために、塾の掛け持ちをしているご家庭は一定数あるようです。

この記事では、集団塾と個別指導塾を併用する際のメリット・デメリットを詳しく解説し、さらに効果的に活用するためのポイントを紹介します。

この記事を書いた人

福永理乃

福永理乃

ライター

受験塾にて中学・高校・大学受験の講師を務める。教育系の書籍出版・編集職を経て現在はWebコンテンツ制作と記事執筆を手がける。 高等学校教諭一種免許(外国語)、FP技能士取得。

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目次

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塾の掛け持ち・併用はするべき?しないほうがよい?

はじめに、中学受験において、塾の掛け持ちをしたほうがよいのか、しないほうがよいのか、実際に塾を併用している人はどれくらいいるのかについて解説します。

なお、一人の生徒が複数の塾を掛け持ちすることは可能です。塾側が通っている生徒に対し、他の塾へ通うことを禁止することはありません。

中学受験塾の掛け持ちはするべきか、しないほうがよいのか

中学受験塾の掛け持ちは、お子さんやご家庭の状況によって、したほうがいい場合と、しないほうがいい場合があります

目的がはっきりしていて、お子さんと保護者の方の間で納得できているならば、塾の掛け持ちはしても問題ないかもしれません。ただし、複数の塾に通ったからといって、必ずしも学力が向上するとは限りません。

しないほうがいい場合でいえることは、今通っている塾の宿題が多く、復習が追いついていない場合です。無理に塾を追加すると、結局どちらも中途半端になってしまい逆効果です。

中学受験の場合、塾の掛け持ちを検討する目的はおもに「成績の向上」「不得意教科の強化」が多い傾向があります。また、受験直前期では「過去問対策」「自習室の活用」、その他の理由では「保護者の都合によるもの」などが考えられます。

掛け持ちで塾に通うことの利点と欠点を考慮したうえで、本当に塾を掛け持ちする必要があるのかどうかを慎重に検討することが重要です

実際に塾を掛け持ちしている人はどれくらいいるのか

あくまでも推察ですが、中学受験においては特に、複数の塾に通う「掛け持ち」「併用」は、多くの生徒が経験していると考えられます。実際、中学受験生が併用することを想定した「集団塾のフォローを専門とする個別指導塾」などもあります

また大手集団塾が運営する個別指導塾もあることから、集団塾だけでは補いきれない学習内容の定着や苦手克服、さらには受験校に特化した対策などを提供できる体制を、塾側も整えていることがわかります。

なお、中学受験ではおもに集団塾に通いながら個別指導塾を掛け持ちするケースが多い傾向がありますが、集団塾とオンライン学習塾、また個別指導塾と家庭教師など、複数の組み合わせが考えられます。

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編集部

6年生の夏頃、過去問を解く段階になって個別指導塾を掛け持ちする子が増える印象です。志望校対策に特化したサポートを求めるご家族が多いように思います。

塾を掛け持ちすると効果があるのか

繰り返しますが、塾を掛け持ちすれば必ず成績が上がるなど、効果が保証されるわけではありません

お子さんにとって本当に塾の掛け持ちが必要なのかどうかは、慎重に検討する必要があります。複数の塾を併用することによるメリットとデメリットをしっかりと把握し、お子さんの学習状況や性格、体力、家計状況や保護者の方のフォロー体制、そして何よりもお子さんの意向を尊重しながら、最適な学習環境を整えることが大切です

中学受験塾を掛け持ち・併用するメリット

ここでは、中学受験において塾を掛け持ちする具体的なメリットを5つのポイントに分けて詳しく解説します。

集団塾で出た疑問点をスピーディーに解消できる

集団塾では、講師が多くの生徒を相手にするため、個々の生徒が抱える疑問にきめ細かく対応することは難しい場合があります。特に、授業中に質問できなかったり、自宅学習でつまずいてしまったりした際に、そのままにしてしまうと理解度が下がり、苦手意識が強まる原因になりかねません。

個別指導塾を併用することで、集団塾で生じた疑問点をその場で質問し、理解できるまで徹底的に教えてもらうことができます。また疑問点をすぐに解消できることで、学習内容の定着を促し、スムーズに次のステップへと進むことができます。

苦手科目・分野に個別対応してもらえる

集団塾のカリキュラムは、全体の進度に合わせて組まれており、特定の教科や分野に苦手意識をもつ生徒への個別対応は限定的です。しかし、個別指導塾はお子さんの苦手な教科や分野に特化した指導をすることができます

例えば、算数の図形問題が苦手、国語の記述問題が苦手といった場合でも、お子さんの理解度に合わせて基礎からていねいに教えてもらったり、集団塾のテキストに沿って演習を行い、お子さんが自分一人で理解して解けるようになるまで繰り返すことも可能です。

苦手教科の克服を効率的に進めることで、お子さんに自信がつき、ひいては教科全体の学力向上につなげることができます。

家庭内では難しいサポートをカバーしてもらえる

中学受験は、保護者の方々にとっても大きな負担がかかります。日々の学習スケジュール管理や宿題のチェックのほか、最新の中学受験情報の収集、お子さんの体調や睡眠時間の管理、講習の際のお弁当作り、過去問対策、お子さんのメンタルケアなど…。

家庭内で全てを行うのは、どれだけお子さんのことを思う親心があっても、物理的に難しいケースが多いといえるでしょう。

個別指導塾は、保護者の方の負担となる集団塾の宿題の進捗管理や、学習面だけでなく精神的なサポートも期待できます。お子さんの学習状況を客観的に見てアドバイスをくれたり、受験に対する不安や悩みに寄り添ってくれたりすることもあります。

また、保護者の方々への情報提供や相談対応も行ってくれる場合もあります。特に、ご夫婦でフルタイム勤務しているご家庭だけでは難しいきめ細やかなサポートを受けることも可能です。

志望校に特化した指導をしてもらえる

中学受験では、志望校によって出題傾向や問題形式が大きく異なります。そのため、志望校に合わせた対策を行う必要があります。

集団塾では、多様な志望校に対応するため、広範囲の知識や解法を網羅的に教えます。一方で、特定の学校に特化した対策は十分ではないことがあります。もちろん、最難関中学では模試やその中学の過去問に特化された講習が行われたりと手厚いですが、中堅校などでは個別の対策は難しいかもしれません。

個別指導塾は、お子さんの志望校に合わせた過去問対策や、その学校特有の出題傾向に沿った演習など、より実践的な指導を行うことも可能です

2つの塾から受験テクニック・受験情報を得られる

集団塾と個別指導塾は、それぞれ異なるノウハウや情報をもっています。

集団塾からは、多くの受験生を指導してきた実績に基づいた受験テクニックや、幅広い学校の入試傾向に関する情報が得られます。

個別指導塾からは、お子さんの個性や志望校に合わせた学習方法や、特定の学校に関する詳細な情報、過去の合格実績に基づいた具体的なアドバイスなどを得られることがあります。

異なる視点から複数の情報を得ることで、より多角的な視点で受験戦略を立て、お子さんにとって最適な受験体制を整えることができるでしょう

塾を掛け持ちするデメリット

中学受験塾の掛け持ちは多くのメリットがある一方、いくつかのデメリットも存在します。中学受験における各ご家庭の目的を達成するためには、これらのデメリットも十分に理解しておくことが重要です。

経済的な負担が大きくなる

複数の塾に通うことで、必然的に経済的な負担が増えることになります。

例えば集団塾に加えて個別指導塾を利用した場合、個別指導塾で利用した単位コマ数分、費用が上乗せされるため、年間で考えるとかなりの金額になることも珍しくありません。

個別指導塾によっては、集団塾で利用している以外の模試を受けることや、教材を購入することを提案するケースもあり、家計に大きな影響を与える可能性があります。

お子さんの教育を重視して費用をかけることも大切ですが、無理のない範囲で継続できるかどうか、事前にしっかりとシミュレーションしておくことが大切です

また現在の志望校がお子さんの現状の学力に合っているのか、そもそもなぜ中学受験をするのかなど根本的な目的について、都度、家族で話し合うことも検討してみてください。

通塾する時間が増えることで、自由時間が減る

塾の掛け持ちは、お子さんの通塾時間を必然的に増加させ、結果的に勉強を忘れて遊ぶ時間や体を休める時間を圧迫します

学校の授業後に複数の塾をはしごしたり、本来なら集団塾がお休みの日に個別指導塾に通ったりすることで、お子さんの自由な時間が極端に少なくなってしまうおそれがあります。

受験生といっても小学生。友達と遊ぶ時間や、ずっと続けている好きな習い事の時間、家族との団らんの時間が減ることで、精神的なストレスを感じたり、ひいては学習意欲の低下につながったりするケースも考えられます。

心身ともに健康な状態で受験勉強を続けるためにも、通塾による負担がお子さんにとって過度にならないか、よく話し合う必要があります。

異なる指導によって、子どもが混乱する可能性がある

集団塾と個別指導塾では、指導方針やカリキュラム、問題の解き方などが異なる場合があります

例えば、集団塾で習った解法とは別の方法を個別指導塾で教えられたり、指導の進め方が大きく違ったりすると、お子さんが混乱してしまう可能性があります。

個別指導塾の、特に有名講師は、独自の教え方や考え方を通じて多くの生徒の合格実績を出してきた、という人も少なくありません。そのような講師に「●●塾ではこのように教えているからそのとおりに」とすると、せっかくの有名講師の特性を生かせないことになります。

一方で、個別指導塾の講師も千差万別のため、中学受験指導経験の少ない講師が担当になってしまうと、小学生向けの考え方や覚え方ではない解法を教えてしまうケースもあります。

特に、まだ学習方法が確立されていない低学年のお子さんや、状況の変化に敏感なお子さんの場合は、異なる指導によってかえって学習効率が落ちてしまうことも考えられます

両方の塾の指導内容を事前に確認し、指導方針や教えている解法、考え方に大きな違いがないかを、保護者が確認することが望ましいでしょう

自分自身で学習する時間が減ってしまう

塾に通う時間が増えることで、お子さんが自分自身で問題に取り組んだり、苦手な部分を克服するためにじっくり時間をかけて試行錯誤したりする「自学自習」の時間が減ってしまう可能性があります

「わからなければ先生に聞けばいい」とばかりに、塾で「教えてもらう」ことに依存しすぎてしまい、主体的に学ぶ力が育ちにくくなることも懸念されます。中学受験で合格すればよい、その後で修正すればよいという考え方もありますが、小学校高学年の時期に身についた学習の習慣は、良くも悪くも後々に影響する可能性があります。

受験勉強において、知識をインプットするだけでなく、アウトプットし、試行錯誤する時間は非常に重要です。塾の時間を増やすだけでなく、いかに自学自習の時間を確保し、質を高めるかという視点も必要になります。

対策として、個別指導塾では不得意教科だけを必要最小限に受講し、それ以外は自習室で、お子さんが自分で問題を解いて考える時間に充てるという方法があります。

ただし、選んだ個別指導塾の自習室がうるさかったり、質問対応の講師がいなかったりすると本末転倒です。見学の際、自習室の確認も行ってください。また、生徒自身に考えさせる指導かどうかも体験授業で確認することをおすすめします。

通っている集団塾の指導内容や進度を理解した塾でないと効果が低い

デメリット3と関連することですが、集団塾と個別指導塾や家庭教師などを併用する場合は、通っている集団塾の指導内容や進度を掛け持ちする塾・家庭教師がきちんと把握しているかどうかも重要なポイントになります。

個別指導塾が、集団塾のカリキュラム内容・進度や使用している教材を把握していないと、的外れな指導になってしまうかもしれません。個別指導塾や家庭教師は1回あたりの授業に対して利用料金が発生するため、見当違いな授業や教え方をされていると、お金を無駄にするばかりでなんの効果も得られないことになってしまいます。

掛け持ちを検討する際は、個別指導塾が現在の集団塾の状況をどこまで理解し、連携を取ることができるのかを確認することが、費用対効果を高めるうえで非常に重要です

解決方法としては、集団塾が運営している個別指導塾を利用する方法があります。例えばサピックスならプリバート、日能研ならユリウスといった選択です。

また集団塾のカバーを積極的にうたっているTOMASやSS-1などの専門塾を選ぶことも一つの方法といえるでしょう。

いずれにせよ、個別指導塾は最終的に講師のスキルや実績によるところが大きいため、必ずお子さんと一緒に無料体験授業を受けること、体験授業の講師が担当してくれるかどうか確認しておくことをおすすめします。

保護者の負担が増える

通う塾が増えることで、保護者の送り迎えの負担が増えることもあり得ます。また、本来は集団塾では休みだった日に個別指導塾を入れることで、お弁当を作る負担も増えるかもしれません。

対策としては、集団塾から近い場所にある個別指導塾を選び、お子さんが一人で歩いて移動できるようにするほか、集団塾によっては同じ建物の中で個別指導塾を運営しているケースもあるので、それを利用する方法などがあります。

お弁当については、受験直前期までは昼食や夕食持参の時間帯を避けて授業を組むなど、工夫することで負担を減らすことも可能です。

ただし、受験直前期になると、どうしてもお子さんは塾にいる時間が増えます。過去問対策や弱点補強、また冬休み中の特訓講座などもあるため、直前期には保護者の方も、全力でサポートできるようにあらかじめスケジュールを組んでおくことや、職場に相談して業務の負担を減らしてもらうことを検討してください。

2つの塾の掛け持ちで効果を上げるためのポイント

塾を掛け持ちする際のポイント

中学受験において複数の塾を掛け持ちするメリットとデメリットを理解し、お子さんにとって最大限の効果を引き出すためには、それぞれをどのように活用するかが重要になります。ここでは塾の掛け持ちで効果を上げるための具体的なポイントを解説します。

個別指導塾で日々の理解不足を補う

集団塾の授業は、多くの生徒に合わせたペースで進められるため、お子さんによっては理解が追いつかない部分が出てくることがあります。特に、一度つまずいてしまうと、その後の学習内容も理解しにくくなる悪循環に陥りがちです。

個別指導塾を、このような「日々の理解不足」を解消するために利用することは一つの方法です。

集団塾の授業内容でわからなかった箇所をピンポイントで質問し、納得できるまで徹底的に教えてもらうことで、その日のうちに疑問を解消し、知識の定着を図ることができます。集団塾の授業をスムーズに理解できるようになれば、学習効率が格段に向上するでしょう。

苦手教科の克服メインで利用

お子さんによっては、特定の科目や単元に強い苦手意識をもっている場合があります。これらの悩みの解決方法として、個別指導塾などを「苦手科目の克服」に特化して利用するケースは多くあります。

例えば、算数の特定の分野だけ個別指導塾で重点的に教えてもらい、理解を深めるなどです。お子さんが特に苦手としている箇所を個別指導塾で集中的に指導してもらうことで、効率的に弱点補強ができます。

集団塾では、全体のカリキュラムに沿って授業が進むため、苦手な部分に時間をかけて取り組むことが難しいことが原因です。また集団塾では、担当の講師に質問しようとしても多くの生徒がいるため十分に対応時間を取ってもらえなかったり、そもそも質問対応ができなかったりするケースもあります。

個別指導塾の最大の利点は、「その生徒に合った指導にカスタマイズできる」こと。そのため、そもそも勉強の習慣がないお子さんには、勉強の進め方を生活指導レベルから整えてもらったり、「どこがわからないか、わからない」というお子さんには基礎の基礎からていねいに教えてもらったりと、多角的な視点からアプローチしてもらえます。

掛け持ちする2つの塾を上手に使い分けることで、苦手意識を少しずつ減らせる可能性が高まります。実際に個別指導塾で対策を行うことで成績が上がると、お子さんが自分に自信をもてるようになります。「がんばれば結果が出せるんだ」「自分は決してできないわけではないんだ」とお子さんが思えれば、塾の掛け持ちは効果を上げたといえます。自信がつけば、自然と学習に取り組めるようになるでしょう。

集団塾の定期テスト対策、解き直しで利用

集団塾では、定期的に実力テストや組分けテストが実施されます。これらのテストは、お子さんの学習到達度を確認するために行われ、テスト結果はその後のクラス分けなどにも影響することがあります。

個別指導塾を、これらの「テスト対策」や、「テストの解き直し」のために活用するのも効果的です。テスト前に集団塾の範囲を復習したり、間違えた問題を重点的に解説してもらったりすることで、テストの点数アップにつなげることができます

また、テスト後の解き直しは、自分の弱点を把握し、今後の学習に生かすうえで非常に重要です。個別指導塾でていねいに解き直しをしてもらうことで、同じ間違いを繰り返さないための対策を立てやすくなります。

過去問添削で利用

中学受験において、志望校の過去問対策は合否を分ける重要な要素です。特に、難関校に多い記述問題、学校独自の特色ある問題など、採点基準が曖昧で自己採点が難しい科目では、専門家による添削指導が不可欠です。

集団塾では、過去問演習の機会はあっても、個別の添削指導までは手厚くない場合があります。この点、個別指導塾であれば、志望校の出題傾向を熟知した講師がお子さんの解答をていねいに添削し、具体的な改善点や得点アップのポイントを指導してくれます。お子さんは自分の弱点を明確に把握し、より効果的な過去問対策を進めることができるでしょう。

また過去問は数年分を解かないと意味がありませんが、その着手の順序や取れた点数の推移の記録、解き直しまで含めたスケジュール構築なども、個別指導塾では対応してくれるケースがあります。通常は保護者が行うのですが、どうしても時間が取れない場合に個別指導塾に相談することも一つの方法です。

ツナガル中学受験のロゴ画像ツナ中
編集部

集団塾によっては過去問の採点を保護者に任せている場合もあります。答えがはっきりしている教科・単元の採点はよいですが、記述式の解答が多い学校などの採点は配点に迷うことも多いでしょう。
個別指導塾の先生に採点までマルっとお任せできれば、より正確に合格基準点に到達しているかの判断ができます。

「集団塾×個別指導塾」併用パターン

個別指導塾の指導イメージ

ここでは、主要な集団塾と個別指導塾を併用する際の具体的なパターンと、それぞれの集団塾の特性を踏まえた個別指導塾の活用法について解説します。

SAPIX(サピックス)との併用

サピックスとの併用におすすめの個別指導塾

サピックスは低位クラスのお子さんには難度的に、一度つまずくと取り戻すのが困難なこともあるようです。

サピックスの授業内容で理解が不十分な単元や、宿題でつまずいた箇所を個別指導塾で補強する場合、特に家庭でのフォローが難しいケースでは、個別指導塾の講師がサピックスの教材に精通していると非常に効果的です。そのため、系列の「プリバート」のほか、その他の個別指導塾でも、講師選びが重要になります

サピックスに通っていて個別指導塾を併用するお子さんの場合、学力不振で通う場合は自信をなくしていたり、疲弊しているケースも見受けられます。個別指導塾では、まずお子さんの緊張をほぐして何が課題かを一緒に考えてもらい、自信をつけてもらうことから始めることも多いです。

また能力は高いけれど基礎がおろそかになっていて、サピックスの内容のカバー以外に基礎固めに重点を置くケースもあります。そのほか、受験直前期には過去問対策で利用するお子さんも多くなるため、志望校の合格実績が多い講師が、担任ではなくても質問に対応したり添削を行ったりできる個別指導塾もあります。

福永理乃ライター
福永理乃

入塾前に希望する使い方ができるか、問い合わせることが大切です。また、個別指導塾と併用を開始する時期によっても使い方は異なってきますので、タイミングを見極めることも重要になります。

受験ママのイラスト3 保護者

直前期のみ「家庭教師のトライ」を併用
母親である私が国語の記述の採点や添削まで手が回らなくなったため、プロの先生に頼ることで安心感がありました。個別対応だからこそ、苦手な問題に時間をかけて深掘りできたのがよかったようです。
(2023年度 桜蔭中合格)

早稲田アカデミーとの併用

早稲田アカデミーとの併用におすすめの個別指導塾

早稲田アカデミーは、競争意識を刺激する熱血指導と、豊富な演習量が特徴の集団塾です。生徒どうしの切磋琢磨を促し、高いモチベーションを維持させる指導が強みです。一方で、その「熱い」指導体制や雰囲気が苦手という生徒もいるようです。

早稲田アカデミーと個別指導塾を併用するケースでは、おとなしい性格で早稲田アカデミーでは質問に行けないというお子さんもいます。「早稲田アカデミーは好きで続けたい、でもどうしてもわからないところがあるのに質問できない、わかるようになってもっとがんばりたい」…というお子さんの場合は、個別指導塾では早稲田アカデミーの宿題やテストで理解不足だった部分を解説し、確実に定着させることを目指します

特定の教科だけ極端に苦手で個別指導塾を利用したい、ということもあります。そのようなお子さんも、得意分野は早稲田アカデミーでこれまでどおり成績を伸ばして自信をつけてもらいつつ、苦手分野を個別で徹底的に克服していくことで、全体の底上げを図ってもらうとよいでしょう。

福永理乃ライター
福永理乃

基本的にはサピックス同様、早稲田アカデミーの課題の復習と解き直しを中心に進め、弱点や基礎固めに個別指導塾を活用することをおすすめします。

日能研との併用

日能研との併用におすすめの個別指導塾

日能研では月例テストの成績順でクラスと席順が決まるため、競争を好むお子さんや、ある程度実力のあるお子さんの場合はやる気アップに効果的なのですが、中には自信をなくしてしまうお子さんもいるようです。

日能研の席順は、あくまでも「自分の学習の振り返りのため」とされています。しかし実際のところ成績の上下は相対評価のため、どんなに自分が努力しても、他の生徒の成績向上の度合いよりも伸びが少なければ順位は落ちてしまいます。これをどのようにお子さんに伝えるかが難しいところです。

「まずは月例テストの結果を出してクラスを上げたい」と個別指導塾に相談するのもよいでしょう。個別指導塾ではもちろん、成績を上げることを目標に取り組みますが、試験のテクニックを身につけて席順を上げることが目的ではなく、何よりも、志望校に合格するための実力をつけることが大切であるとお子さんに伝えます。

日能研のテキストや問題は独特のものもあるため、日能研の問題に慣れている講師に担当してもらい、教え方や進め方をお子さんの理解度に合わせて柔軟に対応してくれる個別指導塾を選ぶことをおすすめします。

受験ママのイラスト2 保護者

スタディアップ(理社のオンライン講座)を併用
共働きだと親が教え込む時間が取れないので、「映像でしっかり理解+音声で繰り返しインプットできる」点が非常に有効でした。短時間で集中できる内容だったので、家庭学習の補完にぴったりでした。
(2024年度 駒場東邦中 合格)

受験ママのイラスト3 保護者

Z会通信教育を併用
筑附の適性検査のような記述・資料読み取り系の対策が、通常の塾のカリキュラムだけではやや弱いと感じたため併用しました。Z会は添削も丁寧で、郵送やオンラインで対応できる点も助かりました。
(2024年度 筑波大学附属中 合格)

四谷大塚との併用

四谷大塚との併用におすすめの個別指導塾

四谷大塚に通っていて個別指導塾などを併用するご家庭の場合も、他の集団塾と同じく、予習シリーズの内容で理解が不十分な箇所や、発展問題でつまずく場合のサポートを想定していることが多いと思います。テキストの解説だけでは理解しにくい部分を、個別でていねいに教えてもらうことで、知識の定着を図ります

四谷大塚の週テストや組分けテストで結果が出ない場合も、個別指導塾ではその対策を行います。ただし、組分けテストの結果が目的ではなく志望校に合格できることが最終目的であることを、ここでもしっかりとお子さんに説明しましょう。

福永理乃ライター
福永理乃

四谷大塚に通うお子さんの志望校は、中堅校から難関校まで幅広い傾向があります。
これは特殊な例ですが、体力的に問題があったり持病があったりして変則的な通い方をしており、理解不足の単元を説明してほしいというご家庭もありました。その他、小5から中学受験を目指して集団塾に入ったため、現在のカリキュラムに追いつけるよう補習してほしいというご要望も実際にありました。学び方のバリエーションが多い四谷大塚ならではといえるかもしれません。

馬渕教室との併用

馬渕教室との併用におすすめの個別指導塾

馬渕教室は個別指導塾も展開しています。課題添削やフォローが手厚いとされますが、教室や講師によっても異なるため、実際に近くの教室に問い合わせることをおすすめします。

馬渕教室に限らず、関西の中学受験塾は「塾ですべて対応する」という考えが比較的多く(ご家庭もそういう考えのところが多い印象)、そのため個別指導塾を、馬渕教室の集団授業が終わってから利用することは時間的、お子さんの体力的に難しいかもしれません。

個別指導塾や家庭教師などを併用する場合は、ピンポイントで、例えば過去問対策に特化するなどの使い方が合っていると思われます。馬渕教室でも過去問対策は行われますが、個別指導塾でさらに踏み込んだ添削指導や、志望校の出題傾向に合わせた個別のアドバイスを受けることで、合格への確率を高められるでしょう。

浜学園との併用

浜学園との併用におすすめの個別指導塾

浜学園に通っており、特に灘中学校などの最難関中学を目指すお子さんの場合は、個別指導塾の講師もしっかりと吟味して選ぶ必要があります。灘や東大寺学園などの合格実績をもつ講師、あるいはそれらの中学受験を経験した卒業生の講師がいれば、個別指導塾で過去問対策を中心に行ったり、通常授業で理解できなかった部分を演習を通じて知識を確実に定着させるなどの方法があります。

特に、より高度な問題の解法や、思考力を養うための指導を個別で深めることで、合格への可能性を高めることができるかもしれません。ただし、お子さんの体力に無理のない範囲で検討することをおすすめします

一方で、そこまでの難関中学を目指すわけではないが中学受験をしたいと考えている場合は、Webスクールも充実しているため、自宅学習で合格を目指すことも可能です。その場合に個別指導塾と併用する場合は、不明点の教科を中心にするとよいでしょう。

この記事のまとめ

中学受験で集団塾と個別指導塾を掛け持ちする場合、さまざまな面を考慮して決めることが大切です。個別指導を活用することで、集団塾では難しい苦手克服や志望校特化対策が期待できます

ただし、2つの塾を併用することで費用やお子さんの拘束時間が増加して負担を与えるおそれがあるほか、指導方法の違いで混乱を招く可能性も。お子様の学習状況や性格、志望校を考慮し、それぞれの塾の役割を明確にすることが重要です

例えば、「集団塾の授業フォローを個別指導塾で行う」「苦手教科のみ個別指導塾を活用する」など、併用する目的をしっかりと決めて利用することが成功の鍵です。志望校合格のため、安易に掛け持ちをすることは避け、お子さんと相談して検討してみてくださいね。