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私立中学校の学費平均とは?3年間でかかる費用と助成金を算出

2025.05.30

私立中学校の学費平均

文部科学省の調査によると、令和5年度の私立中学校の3年間でかかる学校教育費はおよそ338万で、公立中学校の約7.5倍です。

学校教育費 私立 公立
1年間 112万8,061円 15万747円
3年間 338万4,183円 45万2,241
※3年間の費用は文部科学省の令和5年度の年間データをもとに×3年間で算出

私立中学校は設備投資や海外研修など、その学校独自のカリキュラムを採用しているため、公立中学校よりどうしても費用がかかります。

そこで今回は私立中学校でかかる学費の詳しい内訳や公立中学校との比較、補助金・助成金や特待制度などについて紹介します。

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編集部

ふだんは「学費」と呼んでいますが、正しくは「学校教育費」といいます。

この記事では学校教育費以外にも、塾や習い事などのさまざまな教育にまつわる費用も比較しています。

この記事を読んでわかること

  • 私立中学校は3年間で450万円以上の学習費がかかる可能性がある
  • 現状、私立中学校の授業料が無償化になる予定はないため、各家庭で学費の準備が必要
  • 東京都は所得制限なしで年間10万円の助成金を受給できる
  • 成績優秀者向けの特待制度を利用できる私立中学校もある

この記事の監修者

勝目 麻希

勝目 麻希

ライター、 ファイナンシャルプランナー

  • 元銀行員のファイナンシャルプランナー・ライター。二児(姉・弟)の母で、私立中学受験を視野に入れた教育資金作りと資産運用に日々奮闘中。 現在、子どもたちは合計9つの習い事に取り組んでおり、時間とお金をパズルのように組み合わせながら、家族にとって最適な選択を模索している。
  • 【保有資格】2級FP技能士 、簿記3級

※本記事はツナガル中学受験と提携する企業のPR情報を含みます。 広告収益がどの商品・サービスを掲載するか、どこに掲載するかに影響を与える可能性はありますが、 記事の内容や商品・サービスの評価は独自に行なっています。

目次

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都内私立中学校の学費ランキング

私立中学校の学費は、入学金や施設利用費などの支払いがあるため、初年度納入金が一番多くなります。

令和7年度の都立私立中学校の初年度納入金の平均は103万3,387円でした。なお、東京都が発表している初年度納入金のランキングは下記のとおりです。

初年度納入金が高い私立中学校ベスト3

学校名初年度納入金額
1上野学園中学校
(国際コース)
211万7,800円
2玉川学園中学部
(IBクラス)
193万2,300円
3ドルトン東京学園 中等部154万円

初年度納入金が高い私立中学校は、日本にいながら高い英語力を身に付けられたり、海外大学への入試準備ができたりする国際的なプログラムを用意しているところが多いようです。

カリキュラムに海外研修・短期留学もあるため、ほかの私立中学校に比べて費用が高くなるようです。

初年度納入金が低い私立中学校ベスト3

学校名初年度納入金額
1八王子実践中学校66万8,000円
2サレジオ学院中学校69万8,000円
3愛国中学校73万円

一方、初年度納入金が低い学校は、初年度納入金が70万円前後で、2〜3年生も50万円程度の学費で通うことができます。

なお、都内私立の授業料の平均は51万4,983円で、文部科学省が発表している令和5年の全国私立中学校授業料の平均458,018円に比べると高いです。

そのため都外私立中学校に通う場合は、都内私立中学校に通うより費用を抑えることができるケースもあるでしょう。

私立・公立中学校の3年間でかかる学費を比較

学校教育費私立公立
1年間112万8,061円15万747円
3年間338万4,183円45万2,241
※3年間の費用は文部科学省の令和5年度の年間データをもとに×3年間で算出

私立中学校の学校教育費は3年間で338万4,183円となるため、公立中学校の45万2,241円の約7.5倍の費用がかかる計算となります。

私立中学校の学校教育費の中で、最も占めている項目は授業料です。

年間45万8,018円かかっており、公立中学校には授業料の負担がないためトータルで7.5倍という差がうまれたことがうかがえます。

教育費 グラフ
画像引用:文部科学省

私立中学生の教育にかかる学習費は公立中学生の3倍

塾や習い事などの教育にまつわる「学習費」で私立中学生と公立中学生を比較すると、その差は3倍となります。

公立私立
3年間の
学習費総額
162万6,213円467万1,589円

学習費は授業料や修学旅行代などの学校教育費はもちろん、塾やサッカーなどの習い事、家庭学習用の参考書やテキストなどの代金も含まれます。

詳しい内訳は以下の通りです。

私立中学校公立中学校
1年間の
学習費総額
156万359円54万2,475円
(うち学校教育費)112万8,061円15万747円
(うち給食費)9,317円3万5,667円
(うち学校外活動費)42万2,981円35万6,061円

公立中学校に通うのに比べて、私立中学校に通うとかかる学習費総額は約3倍です。

なお、私立中学校で給食を提供しているのはごく一部なので、平均値は9,317円となっています。給食がない私立中学校に通う場合は、毎日のお弁当代も別にかかります。

また、習い事や塾などの学校外活動費は、公立中学校の場合は35万6,061円でした。高校進学のための塾代などがかかっているからだと想像できます。

ただし、学校外活動費に関しても、私立中学校の方が6万6,920円多いです。私立中学校に通っても、塾に通って高校・大学進学の準備をするのが実情としてあるようです。

このとおり、私立中学校の学習費は学校教育費だけではなく学校外活動費も大きくなります。「中高一貫がいいけれど、そんなにも払えない…」と感じるのであれば、私立中学校ではなく公立の中高一貫校を検討するのも方法です。

私立?公立?中・高の進学パターンで比較

次に、中学・高校の3年間の学習費の合計を私立・公立別にご紹介します。

私立公立
中学467万1,589円162万6,213円
高校307万7,235円178万7,328円
※塾や習い事などの学校外活動費も含む

さらに、3つのパターンで中学・高校の学習費の合計を比べます。

公立中学・公立高校341万3,541円
公立中学・私立高校470万3,448円
私立中学・私立高校774万8,824円

私立中学校に入学したら、高校も私立に進学することが多いでしょう。そうなると、中高6年間の学習費総額は774万8,824円になります。一方、公立の中高に進学する場合の学習費総額は341万3,541円で、私立の中高に通う場合と比べると約430万円の差が生まれます。

ただし、東京都は令和6年度より所得制限に関係なく私立高校の授業料が実質無償化となりました。これにより、都内私立高校平均授業料相当額の年間48万4,000円が支給されます。

また、令和8年度には、全国の私立高校の授業料を実質無償化にする協議も行われています。そのため、今後私立高校の授業料が無償化となれば、一人あたりにトータルでかかる学習費の負担を減らすことができるでしょう。

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編集部

私立高校の授業料が無償化になったとしても、授業料以外にかかる経費(指定カバンやPCなど)が公立高校よりも多い傾向にあります。

この後に続く「私立中学校の授業料以外にかかる費用」を参考にしてみてください。

授業料以外にかかる費用

塾 費用

私立中学校は、授業料以外にもかかる費用があり、おもな内容は下記のとおりです。

  • 入学金
  • 寄付金
  • 施設整備費
  • 教科書
  • 通学費
  • 制服
  • 指定コート
  • 指定カバン
  • 指定ジャージ
  • 指定靴
  • PC
  • 研修積み立て

入学金は入学時に支払う必要があるため、入学初年度が一番お金がかかります。寄付金・施設整備費・制服代に関しては、支払いが必要な学校と必要ではない学校があります。

また、自宅から離れた学校に通う場合は、通学費のことも考えなくてはいけません。なお、海外研修や留学を行うカリキュラムの場合、その分研修積み立ての負担も大きくなります。

実際にかかる費用を実例から紹介

実際に私立中学校でかかる費用の内訳を、渋谷中学高等学校の2025年度パンフレットを例に紹介します。

①入学納入金入学金29万円 
施設拡充費7万円 
②月額納入金授業料4万4,500円
施設費1万7,000円
研修積立金5,000円
生徒会費1,000円
教育後援会費2,500円
小計7万円
③その他教育後援会入会金3,000円
教材費5万5,000円
制服等(学校規定品)約11万円(男子)
約12万円(女子)
合計①+②×12ヶ月+③約137万円(男子)
約138万円(女子)
出典:渋谷教育学園渋谷中学高等学校

パンフレットには「2024年度参考金額」と記載がありますが、物価や人件費の高騰で上がることも想像できます。

また私立の学校は海外研修が任意で実施されることがありますが、ほとんどの生徒が参加することが多いので研修費用を事前に準備しておく必要があります。

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編集部

どこの私立中学校でも学費が上がったり、海外研修の費用が追加でかかったりする可能性があります。

入学後の保護者会などで事前共有されるので、準備しておきましょう。

私立中学校の無償化はいつ?補助金や助成金などで負担軽減

私立高校の授業料は実質無償化になる流れになっていますが、私立中学校の授業料が無償化になる話はありません

公立の中学は義務教育で誰でも無償で通えるようになっており、私立中学校はあくまで選択肢の一つだからです。

また、私立中学校が無償化になれば、私立中学校に通う生徒が増えて、公立中学校の価値が下がるリスクも考えられます。

財源の確保も問題になるため、私立中学校の学費が完全に無償化になることは当分ないといえるでしょう。

ただし、授業料を軽減できる補助金や助成金が利用できるケースもあります。

補助金・助成金の有無資格申請方法金額所得制限
東京良い評価【私立中学校等
授業料軽減助成金】
・保護者等(申請者)と生徒が
東京都内に住所を有している方
※保護者と生徒が
都内に住所を有していれば、
都外の学校に通学
する場合も対象。
東京都私学財団の
ホームページから申請
年額 10万円なし
※令和6年度より
所得制限なし
埼玉悪い評価
千葉悪い評価
神奈川悪い評価
愛知悪い評価
大阪悪い評価

全国的に私立中学校の授業料を所得制限なしで負担してくれる補助金や助成金はほとんどありません。

そんな中、東京都の「私立中学校等授業料軽減助成金」は令和6年度より所得制限なしで3年間で最大30万円の受給ができるようになりました。

少しでも学費の負担を減らすために、申請して損はないでしょう。

また、神奈川県・埼玉県・愛知県・大阪府・兵庫県などには、在学中に失職や倒産などで家計が急変した場合に利用できる補助金があります。

万が一、在学後に家計の急変があった場合には利用できるか確認してみてください。

特待生制度で学費を抑える

模試の様子

私立中学校の学費を抑えたい場合、学業やスポーツ、文化活動などで優秀な成績を収めた生徒向けの特待制度を狙うのも一つです。

例えば、全国的にトップレベルの進学校である埼玉県の栄東中学校の特待制度は下記のとおりです。

6年間特待合格中学入学金・ 授業料3年間・ 施設設備拡充費3年間
高校入学金・授業料3年間・施設設備拡充費3年間・管理費3年間
3年間特待合格中学入学金・授業料3年間・施設設備拡充費3年間
1年間特待合格中学入学金・授業料1年間・施設設備拡充費1年間 
※入学後、1年間の総合成績により次年度特待生(授業料1年間)の選考を行う
出典:栄東中学校|令和4年度生徒募集要項

栄東中学校の特待制度は、東大・難関大クラスのものなので、難易度は高いです。

しかし、中学3年間特待で入学できれば入学金25万円、授業料90万円(月2万5千円×36カ月)、施設拡充費60万円(20万円×3年間)の合計175万円の負担を減らせます。

なお、学校によって、特待制度は大きく異なります。授業料が免除されるケースが多いですが、入学金が免除になるケースなどもあるので、各学校のホームページやパンフレットなどで確認しましょう。

ツナガル中学受験のロゴ画像ツナ中
編集部

私立中学校に通わせたいけれど費用の捻出が難しい…という場合に、志望校の偏差値レベルを下げて特待生を狙う、という工夫をする人もいますよ。

FPからのアドバイス

よくある質問

最後に、中学受験や学費に関する読者の質問にFPの勝目がお答えします。

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私立中学校を
検討している母

中学受験のためには小学校中学年から塾に通う必要があると思いますが、塾代が心配です。どのくらい準備すれば良いですか?

私立中学校に通うためには、入学してからの費用だけではなく、受験対策のための塾代も考える必要があります。一般的に小学4年生から塾に通うケースが多く、小学4年生から3年間通うと200万円〜250万円かかると言われています。

ただし、最近は受験競争が激化していることもあり、低学年から塾に通うケースも増えているようです。低学年から塾に通えば、その分トータルでかかる教育費の負担も増えます。

勝目 麻希監修者
勝目麻希

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私立中学校を
検討している母

小学4年生からの塾代だけで200〜250万円もかかるのですね!塾代と私立中学校の学費はトータルでいくらかかるんでしょうか?

私立中学校に3年間通う際にかかる総学習費は467万1,589円です。塾代200〜250万円と合わせて、小学4年生から中学3年生までの6年間で約650〜700万円かかります。もちろん、学校や塾によって費用は異なりますが、余裕を持って年約110万円程度の費用を用意しなくてはいけないと考えておきましょう。

勝目 麻希監修者
勝目麻希

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私立中学校を
検討している母

年110万円ですか!!想像していたより負担が大きいです……。

すでに貯蓄があれば話は別ですが、小学4年生以降で収入から生活費などを差し引いて年110万円の教育費を捻出できなければ、私立中学校に通うのは厳しいかもしれません。また、年110万円の支出をしながら大学の学費を貯めることも頭に入れておく必要がありますし、兄弟がいる場合には、その分の教育費も考慮する必要があります。

勝目 麻希監修者
勝目麻希

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私立中学校を
検討している母

東京都は私立高校の授業料が実質無償化になりましたが、以前に比べれば教育費の負担は減っているのでしょうか?

おっしゃるとおり、東京都は令和6年度より公立高校だけではなく私立高校も所得制限なしで授業料年48万4,000円が支給がされることになりました。3年間で約145万円の負担を軽減できるようになったと思うと、ありがたいですよね。

また、令和8年度には、全国の私立高校の授業料が実質無償化になる協議も行われています。引き続き授業料以外の負担(入学金や施設利用費など)は必要ですが、私立高校の授業料としてかかる予定だった費用を私立中学校の授業料に充てるという考え方もできるでしょう。

また、大学付属の私立中学校に入学できれば、塾に通うことなく高校・大学に進学できる可能性もあります。そうなれば、高校受験や大学受験の塾代を抑えることができるでしょう。

勝目 麻希監修者
勝目麻希

アイコン

私立中学校を
検討している母

特に都内は私立中学受験をする人が増えており、子どもの友達も中学受験をするという話をよく聞きます。我が家は、年110万円の支出が増えると、家計はギリギリになりそうで迷います。挑戦しても大丈夫でしょうか?

各家庭により教育費に使えるお金や、教育費に対する考え方は異なると思いますが、無理をすれば家庭の雰囲気が悪くなったり、家計が困窮したりする可能性もあります。そうなれば、かえって子どもに精神的な負担をかけることになるでしょう。教育費にお金を使いすぎて、生活が苦しくなれば本末転倒なので、無理がない範囲で中学受験に望むようにしてください。どうしても中高一貫にこだわるのであれば、特待制度で通える学校や公立の中高一貫校を検討してみてはいかがでしょうか。

勝目 麻希監修者
勝目麻希

まとめ

私立中学校に通うと、公立中学校に通うのに比べて約3倍の学習費がかかります。

また、進学するためには小学4年生からの塾代もかかるため、学費の準備はなるべく早めに準備した方が安心です。

なお、私立中学校の学費が無償化になる予定はありませんが、現在は東京都の私立高校の授業料が実質無償化になりました。

2026年度には全国の私立高校で無償化になる可能性があります。私立高校の授業料が浮く分、私立中学校の授業料に回すという考え方もできるでしょう。

また東京都の場合は所得制限なしで【私立中学校等授業料軽減助成金】が利用できますし、各学校の特待制度を活用できる可能性もあります。

私立中学校が選択肢としてあるのなら、使える制度はしっかり活用し学費の負担を軽減できるようにしたいですね。