大学無償化の2025年最新情報|多子世帯と私立理工農系の学生が対象に!
2025.05.30

2025年4月から「高等教育の修学支援新制度(大学無償化)」の内容が拡充されました。
「高等教育の修学支援新制度」は、授業料等減免と給付型奨学金の2つがあり、今回は多子世帯向け支援と中間層(世帯年収約740万円未満)向けの支援が拡充されたのです。
この記事では、「高等教育の修学支援新制度」の対象者や支援される金額、対象条件についてできるだけ分かりやすく説明します。お子さんの教育資金を考える上での参考にしてください。
この記事を読んでわかること
- 同時に扶養する子の人数が3人以上の多子世帯は、所得制限なく大学等の入学金と授業料が年間最高70万円まで減免されることになった。
- 多子世帯で世帯年収約740万円未満の場合、給付型奨学金を満額の4分の1まで受給できる。
- 私立理工農系の大学に在籍する子のいる世帯年収約740万円未満の世帯は、文系との授業料差額分の授業料等減免を受けられる。
ツナ中
編集部
ツナガル中学受験では、学費支援制度に関する最新情報も取り上げていきますのでぜひ参考にしてください。
この記事の監修者

勝目 麻希
ライター、 ファイナンシャルプランナー
- 元銀行員のファイナンシャルプランナー・ライター。二児(姉・弟)の母で、私立中学受験を視野に入れた教育資金作りと資産運用に日々奮闘中。 現在、子どもたちは合計9つの習い事に取り組んでおり、時間とお金をパズルのように組み合わせながら、家族にとって最適な選択を模索している。
- 【保有資格】2級FP技能士 、簿記3級
目次
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大学無償化制度とは? 要点をサクッと解説

対象者 | 区分 | 年収の目安 | 支援額※令和7年度 |
---|---|---|---|
住民税非課税世帯の学生 | 第Ⅰ区分 | 〜約270万円 | 給付型奨学金:満額 授業料等減免:満額 |
住民税非課税世帯に準ずる世帯の学生 | 第Ⅱ区分 | 〜約300万円 | 給付型奨学金:満額の3分の2 授業料等減免:満額の3分の2 |
第Ⅲ区分 | 〜約380万円 | 給付型奨学金:満額の3分の1 授業料等減免:満額の3分の1 |
|
私立理工農系の学生 | ━ | 〜約740万円 | 授業料等減免:文系との授業料差額 |
多子世帯の学生 | 第Ⅳ区分 | 所得制限なし |
授業料等減免:定められた金額 給付型奨学金:満額の4分の1 |
出典:文部科学省「令和6年度からの中間所得世帯(多子世帯・私立理工農系)への対象拡充について」
監修者
勝目麻希
もともとの「高等教育の修学支援新制度(大学無償化)」は、住民税等非課税世帯やそれに準ずる世帯だけが対象でした。2025年4月から中間層向けの支援が広がったことにより、支援の対象者が約34万人だったのに対し、約41万人増え、約75万人になる計算です。
2025年度から内容が拡充
2025年度からの対象者
- 多子世帯の学生(扶養されている子どもが3人以上)
- 年収の目安が約740万円未満で私立の理工農系の学生
対象者の事例
- 本人・親A・親B(無収入)・高校生・中学生の5人家族(多子世帯)の場合、所得制限なく授業料等が減免になるのに加えて、親Aの年収が698万円未満の場合は給付型奨学金も満額の4分の1まで受給可能
- 本人・親A・親B(無収入)・高校生の4人家族の場合、親Aの年収が698万円未満であれば、私立理工農系の学生の授業料等減免を受けられる
大学無償化制度の支援金額
1.多子世帯の学生
授業料等減免 上限額 |
国公立 | 私立 | ||
---|---|---|---|---|
入学金 | 授業料 | 入学金 | 授業料 | |
大学 | 28万円 | 54万円 | 26万円 | 70万円 |
短期大学 | 17万円 | 39万円 | 25万円 | 62万円 |
高専4・5年 | 8万円 | 23万円 | 13万円 | 70万円 |
専門学校 | 7万円 | 17万円 | 16万円 | 59万円 |
給付型奨学金
給付型奨学金 ※多子世帯かつ年収約700万円未満の家庭 |
支給年額:満額の4分の1 |
---|---|
国公立大自宅通学 | 約9万円 |
国公立大自宅外通学 | 約20万円 |
私立大自宅通学 | 約12万円 |
私立大自宅外通学 | 約23万円 |
2.私立理工農系の学生
対象者 | 支援金額 |
---|---|
世帯年収の目安が約740万円未満の世帯 | 私立学校における文系との授業料差額 |
ツナ中
編集部
私大の理学・⼯学・農学の学生が対象です。4年制大学の場合は入学金が約9万円、授業料約23万円が上限支援となります。
手続き方法
高等教育の修学支援新制度の「授業料等減額・免除の申し込み」は、入学後に学生本人が各学校の窓口にて行います。
なお、「給付型奨学金」を利用したい場合には、学校に必要書類を提出した上で、インターネットで申し込みをします。
詳しくは、文部科学省「高等教育の就学支援新制度」ご参照ください。

多子世帯の学生の利用条件
多子世帯の学生の利用条件について詳しく説明していきましょう。
多子世帯の学生の利用条件
- 条件1.3人以上の子どもを同時に扶養している世帯であること
- 条件2.文部科学省が指定する学校への進学者であること
- 条件3.学業に関する要件を満たしていること
3人以上の子どもを同時に扶養している世帯
多子世帯は、3人以上の子どもを同時に扶養している世帯のことを指します。
就職などにより扶養から外れ、同時に扶養している子どもの人数が3人以下になれば支援対象外となります。
なお、学生と生計維持者のマイナンバーを通じて扶養する子どもの人数が確認されます。前年12月31日時点の情報が基準となります。
また、大学院生は支援の対象となりません。ただし、大学院生で扶養に入れている場合、その期間は第2子以降の大学等費用は減免されます。
監修者
勝目麻希
多子世帯は、第1子が私立大学に通う場合、入学金26万円と4年間の授業料280万円の306万円が減免されることになります。歳が近い子どもを育てていて同時期に大学に通う場合、第2子・第3子の入学金や授業料も減免されるので恩恵が大きくなります。
文部科学省が指定する学校への進学者
支援の対象となるのは、大学・短大・高専・専門学校で、文部科学省が指定する学校です。海外大学等は授業料等減免の対象になりません。
授業料等減免の対象になる学校については、下記の文部科学省ホームページにて、学校名や所在県を入力することで対象校が検索できます。
支援の対象となる大学・短大・高専・専門学校の検索ページ>> 文部科学省「対象校の一覧」
学業に関する要件を満たしている
多子世帯の授業料等の無償化は、学業に関する要件を満たしている場合に利用できます。具体的には、下記の通りです。
学業に関する要件
大学1年生 | 大学2〜4年生 |
---|---|
・⾼校の評定平均値が3.5以上であること ・⼊学試験の成績が⼊学者の上位1/2以上であること など |
在学する⼤学等における学業成績について、GPA(平均成績)等が上位1/2以上であること など |
出典:文部科学省
ツナ中
編集部
具体的には、出席率が6割以下・修得単位数が6割以下の場合に警告→廃止となるという記載があります。学修意欲とともに、学修成果についても一定の学業要件があるのは気になりますね。
私立大学の理工農系に在籍する場合の利用条件
私立大学の理工農系の学科等の学生で授業料が減免される場合は下記の通りです。
私立大学の理工農系に在籍する場合の利用条件
世帯年収の目安が740万円未満
世帯年収の目安が740万円未満の家計が対象となります。ただし、世帯年収の基準は家族構成によって異なります。
例えば、⼦3⼈(本⼈・⼤学⽣・⾼校⽣)のふたり親世帯は、世帯年収(夫婦のどちらかが無収入の場合)は740万円までが対象となります。該当ラインのご家庭は、支援を受けることができるかどうか問い合わせてみることをおすすめします。
多子世帯に属しておらず、理工農系の学科等に在籍している
私立理工農系の授業料等減免支援は、多子世帯に属していない場合が対象となります。
理工農系学部学科で対象となるかを確認したい場合、文部科学省の対象学校リストをご参照ください。
支援の対象となる大学・短大・高専・専門学校の検索ページ>> 文部科学省「対象校の一覧」
学業に関する要件を満たしている
私立理工農系の授業料等の減免は、下記の学業に関する要件を満たしている場合に利用できます。なお、学業に関する要件は、「高等教育の修学支援新制度」全般で同じです。
大学1年生 | 大学2〜4年生 |
---|---|
・⾼校の評定平均値が3.5以上であること ・⼊学試験の成績が⼊学者の上位1/2以上であること など |
在学する⼤学等における学業成績について、GPA(平均成績)等が上位1/2以上であること など |
大学費用っていくらかかるの?国立・私立大学に通う場合の目安
子どもの進路に関しては長期的な視点を持ち、「今から準備できることは何か」を探っておきたいものです。ここからは、大学でかかる費用の目安についてもご紹介しておきます。
国立大学の費用
国立大学の授業料、入学料等は文部科学省令で標準額が定められています。
授業料 | 入学料 |
---|---|
53万5,800円 | 28万2,000円 |
ただし、文部科学省の省令では、授業料を標準額より最大で20%まで引き上げることができると定めています。実際に、2019年以降東京工業大学・千葉大学・一橋大学などが授業料を引きあげています。
東京大学も2025年度4月入学者から値上げを決定し、改定後の授業料は64万2,960円になっています。
参照:日本経済新聞
監修者
勝目麻希
エネルギーや人件費の高騰などに伴い、首都圏の国立大学の授業料が値上がりしています。今後はその他の国立大学の授業料も値上げする可能性もあるでしょう。将来、現在の標準額以上の授業料がかかる可能性があることも頭に入れておいてください。
私立大学の費用
文部科学省の調査によると、令和5年の私立大学の授業料等の平均は下記の通りでした。
授業料 | 入学料 | 施設設備費 | 実験実習料 | その他 | 総計 | |
---|---|---|---|---|---|---|
私立大学 | 95万9,205円 | 24万806円 | 16万5,271円 | 2万8,864円 | 8万3,194円 | 147万7,339円 |
私立短期大学 | 72万9,069円 | 23万7,122円 | 16万3,836円 | 4万0,229円 | 10万1,732円 | 127万1,988円 |
私立高等専門学校 | 78万1,365円 | 24万5,176円 | 10万2,824円 | 2万0,329円 | 13万871円 | 128万565円 |
参照:文部科学省
その他の学費支援制度
大学進学や留学に関して、学費支援制度の種類が増えています。
なお、自分が利用できる奨学金があるかを調べたい場合、下記のリンクから日本学生支援機構のシミュレーターを利用してみましょう。具体的な支援について知ることができます。
進学資金シミュレーター>>独立行政法人 日本学生支援機構
ここからは将来の教育資金計画を立てる上で重要な学費支援制度について、2025年5月時点での情報をまとめてお伝えします。
1.高等学校等就学支援金制度
東京と大阪では、すでに高校の授業料が無償化されていますが、全国的に2025年4月から、所得制限なしで公立・私立を問わず一律年間11万8,800円が支給されるようになりました。また、2026年4月からは私立高校の支援額が45万7,000円に引き上げられる予定です。
2.各都道府県独自の大学無償化
各都道府県独自の大学無償化支援もあります。
東京都では2024年度から、学生の生計維持者が都内在住の場合、都立大学等の授業料が所得制限なく全額免除となりました。
また、2026年度から大阪府が高校・大阪公立大学の授業料・入学金無償化を始める予定です。
出典:大阪府「大阪公立大学・大阪公立大学高専等の授業料等支援制度について」
兵庫県も県立大学・大学院の授業料・入学金無償化を段階的に進めています。それに合わせて、県外生の入学金の引き下げ(42万3,000円→28万2,000円)も行っています。
出典:兵庫県「県立大学の無償化」
3.貸与型奨学金
返済の必要がある奨学金(貸与型奨学金)の利用もできます。貸与型奨学金には無利子で利用できる第一種奨学金と有利子で利用できる第二種奨学金があります。利用に際しては、世帯収入や学力の要件がありますので、日本学生支援機構のホームページをご確認ください。
貸与型奨学金
>> 独立行政法人 日本学生支援機構
4.国の教育ローン
日本政策金融公庫では、上限350万円まで固定金利年2.95%で借り入れできる教育ローンの提供をしています。奨学金が学生が借り入れるのに対し、教育ローンは親が借り入れる点が異なります。子に借金を負わせたくない場合には、こちらを利用するのも良いでしょう。
教育一般貸付(国の教育ローン)
>> 日本政策金融公庫
ツナ中
編集部
固定金利年2.95%は銀行や消費者金融のローンと比べて、かなりの低金利です。長期的に見ると総返済額に違いが大きく出ます。
大学無償化制度についてのQ&A
最後に、よくある質問についてお答えします。
Q.扶養親族の判定は?
生計維持者が誰かを扶養親族とするには、生計維持者が税制上の申告等(年末調整、確定申告、住民税申告)の手続きを行う必要があります。扶養親族は、各年度に課税される住民税において、その年度の前年の12 月31日時点で判定されます。例えば、令和6年度住民税において扶養親族が判定されるのは、令和5年12月31日です。
出典:「修学支援新制度(給付奨学金)第Ⅳ区分の新設に関するQ&A」
Q.兄(姉)が扶養から外れると、子どもの数が2人になります。この場合、いつまで「多子世帯」の支援を受けられますか?
兄(姉)が就職等で扶養から外れると、多子世帯の支援は受けられません。ただし、ある年の4月に社会人になった兄(姉)がいて、扶養から外れる見込みになったとしても、その情報が反映されるのは、その年の次年の10月です。
Q.留年した場合は?
留年により正規の修業年限で卒業できない場合、支援は停止されます。
出典:文部科学省「令和7年度からの奨学金制度の改正」
Q.母子家庭は大学無償化の対象になる?
母子家庭(ひとり親家庭)で家計の経済状況に関する要件や多子世帯などの要件に当てはまる場合、授業料等の減免や給付型奨学金の支給が受けられます。
まとめ
理工農系私立大学の学生は、世帯年収約740万円まで文系学科との授業料の差額が減免されるため、中間層への支援が広がりました。また、多子世帯に関しては所得制限なく利用でき、約300万円の支援を受けられるため、家計の負担を大きく減らすことができるでしょう。同時期に大学に通う場合は、第2子以降の学費も減免されます。
これらの制度を活用するためには申請が必要なので、手続きを忘れないようにしましょう。そして、学業に関する要件を満たす必要があるため、途中で支援が打ち切りにならないよう、お子さんにはしっかり学業に取り組んでもらうことを約束しておきましょう。